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労働政策研究・研修機構研究員の濱口桂一郎さんが、ご自身のブログで、長時間労働規制がなかなかすすまない理由を、男性社員のガンバリズムで説明しておられました。
労働者側が長時間規制を唱え、経営者側がそれに反対するというわかりやすい構図に見えるが、現場レベルに行けばそんな単純なものではない。労働者側としては、たくさん残業して残業代を稼ぎたいという本音があることは確かだが、それだけにとどまるものとも言えない。実はここには、日本型雇用システムにおける長時間労働の意味が露呈しかかっているのではないか…というものです。
日本型雇用システムにおける長時間労働の意味っていったい何なのでしょうか。
大卒男性は将来の幹部候補として採用・育成され、十数年は給与の差もわずかで、管理職になるまですべての人に残業代も支払われ、多くの人が将来への希望(いずれは大幹部?)を抱いて働き、働かされる。しかし。誰もが部長や役員まで出世できるわけではない。かくして、日本には「ふつうのエリート」が大量発生するのだが、その実体は「ふつうの人」に「欧米のエリート並みの働き」を要請しているだけ。欧米には「ふつうのエリート」などおらず、ごく少数の「エリート」と大多数の「ふつうの人」がいるだけである。
少数ながら部長や役員に出世する人もいるんだからこの「平等な」システムも悪くないじゃないかと思うかもしれないが、そうではないからこそ長時間労働が問題になってくるのだと濱口さんは指摘しているのです。
このシステムにおける「平等」とは、女子どもに支えられがむしゃらに仕事にまい進できる者だけの「平等」にすぎず、できないものははなっから戦力外というインチキ平等なのである。男にとっての平等は女にとってはなんら平等ではないというものです。
ノンエリートの男性たちのガンバリズムの平等主義が戦後日本の経済発展の原動力の一つとなったことは間違いないが、その成功の原因が、今や女性や、さらには男性でもさまざまな制約のために長時間労働できない人たちの活躍を困難にし、結果的に日本経済の発展の阻害要因になりつつあるとすれば、私たちはそのガンバる平等という戦後日本の理念そのものに疑いの目を向けて行かざるを得ないでしょう…と結ばれています。
私はこの記事を読んで久しぶりにあることを思いだしました。
20年ほど前でしょうか、NHK総合だか教育だかで「真剣10代しゃべり場」という番組がありました。10代の若者がテレビカメラの前で好き勝手なことをしゃべるだけで、あんまし真剣でもありませんでしたが…参加を許されている大人は一人だけです。そのときのゲストはゆとり教育の推進宣伝マンである文部省官僚の寺脇研さんでした。
寺脇さんはラサール高卒東大卒のエリート官僚です。学力格差がいかにいけないことか、落ちこぼれる子どもがいることがいかに問題であるか、競争がいかにいけないかを真剣な表情で10代の若者に訴えていました。医学部を目指しているとかいう進学校の学生も同じようなことを言っておりました。しかし、他の参加者、エリートではないフツーの10代からは大ブーイングでした。「競争がなかったらどうやって上に行くんだ!ゆとり教育なんてとんでもない!」というのです。エリートがゆとりを重要視し、ノンエリートが詰め込み競争を支持する…とても興味深いものがありました。寺脇さんの苦笑いとエリート学生の憮然とした顔が印象的でした。
もとより「ゆとり教育」がゆとりなんぞどうでもよく、たんにエリートを生産したかっただけなのは今では周知のことですが、(寺脇さんもほんとのところはわかっていたと思います。)その他大勢のノンエリートはたまりません。入り口で選抜されて、おまえは就職に役立つ教科だけを勉強しろなんてたまったもんじゃありません。猛烈な反対があるのも当然です。
でもですね。競争で上に行くチャンスがあるという学生はやはり、努力する環境がある程度整っているんです。とりあえず大学行って、でもなんか違くない?と不満に思い、親にキレられながらも専門学校に入りなおしたり、留学したりが可能な子たちです。あの頃は今ほど子どもの貧困が騒がれていなかったけれど、高校に行けない、大学に行けない子どもたちにとっては競争は全然上に行くチャンスなんかではないのです。はなっから無縁なのです。
こうやって、多くの子どたちが(むしろ親か)がんばって大学行って学位とか取ればいい就職口があり、出世できると夢見て、教育を投資とみなし、奨学金なんかもがんがん使って、どんどんできてくる大学にどんどん入っていったというわけです。
そして今できすぎた大学を(誰でも入れるような大学は文系が圧倒的に多いようです)どうする…ってのでつぶすわけにもいかず、職業大学だのなんだのとやってるのですね。
労働問題と教育問題、双子ちゃんのようです。
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