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「お上の事には間違いはございますまいから」

森鴎外の『最後の一句』に出てくる、まさしく最後の一句である。

死罪を言い渡された父親の身代わりとなるよう奉行所に願い出た娘のいち(16歳たぶん数えで)は、奉行から「身代わりが許されると、死刑になって父の顔を見ることはできないが、それでもよいか」と尋ねられます。「よろしゅうございます」と答え、少し間をおいてから冒頭の言葉を言い足すのです。

『最後の一句』は、中学3年のときの国語の教科書にのっており、悪友は教師から意にそわない注意を受け、「お上のことに間違いはございますまいから」などと言い返して教師を絶句させていました。

法学学習のサポート雑誌『法学教室12月号』の少年法の現在という特集のなかで、名古屋高等裁判所判事の河原俊也さんが、この小説を引用していたため、なつかしいエピソードを思い出したのです。

いちの「最後の一句」は、いちと言葉を交えた奉行のみでなく、現在の少年審判を担当する者の「胸をも刺す」というべきであるとして、少年審判の解説の冒頭で紹介しています。

原作は別にあり、鴎外はそれをアレンジしています。「お上の事に間違いはございますまいから」という言葉は原作にはなく、鴎外の創作だそうです。

鴎外はピラミッドの頂点に君臨する超エリートでしたが、組織への不満が非常に大きかったようで、官僚批判の一句であったと思われます。

今現在この言葉は官僚批判とはなり得ません。

いちや鴎外が痛烈に皮肉ったお上とは何でしょうか。

河原判事がこの言葉を「胸をも刺す」ものとして少年審判に臨んでいることは、闇夜を照らすわずかな光明なのかもしれません。

憲法で独立が保障された司法が、何におもねることもなく「法の下」で「良心に基づき」審判を下すことが困難であるとすれば、どこに何に希望を見出せばいいのでしょうか。

教師に向かって「お上の事に~」などと言っていた時代は古き良き時代だったのかもしれない。
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