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宅配業界の労働実態が詳しく書かれているのではないか。期待しながら『仁義なき宅配ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(横田増生著)を読み始めた。

著者の横田氏は会社や労働者への取材以外にヤマト運輸や佐川急便に労働者として潜入もしている。本の最初から一緒に働く場面は出てくるのだが、仕事の中身や宅配業界の動向などばかりでなかなか労働の実態が出てこない。

その後もヤマトや佐川の歴史、歴代社長のこと、日本郵便の小包配達の歴史、運送業界全体の歴史、ときどきアマゾンが顔を出すというかんじで、労働実態に詳しく言及するのは終わりごろである。

もどかしく感じたが、そもそも業界を知らずして労働実態がわかるわけがないのである。残業が多いとか、サービス残業ばかりで未払い賃金が多いとかはわかっても、なぜ多いのかはわからない。どの業界も「人手不足」を挙げるが、なぜ人手不足なのか。理由は仕事がキツく、給料が安いからである。では、なぜ?その答えはやはり業界を知らずには導き出されない。

6章、「宅配ドライバーの過労ブルース」によれば、ヤマト運輸ではサービス残業だけで過労死ラインを超えているという。宅配ドライバーの多くを請負でまかなっている佐川急便が、安すぎる料金のアマゾンとの契約を打ち切り、ヤマトがアマゾンの商品を運ぶようになったが、それがさらにヤマトの労働者を追いつめている。休憩が取れなくても、残業しても記録上は休憩を1時間取って、残業はないことになっている。自己申告しても給与に反映されることはほとんどないという。

生産性をあげるため、4人のドライバーで配達するシフトを組んでいても、その日の物量が少ないと一人帰らせて、3人で運ぶことで生産性を上げるようにという指示が出る、というのが印象的だった。

日本人は労働生産性が低いとよく言われる。一人一人の仕事のやり方でいくらでも効率アップが可能という、コンサルタントお得意のやつである。だが、そういったものとは異なる次元での生産性アップがあるということである。私はかつて、ファーストフードチェーン店でアルバイトをしていたが、その店では30分ごとに売り上げがわかるので、売り上げが少ないと「レイバーカット」と称して休憩を取らされたり、早く帰らせられたりしていた。かくして生産性は保たれるのである。

宅配業界の仕事が給料が安くキツイのは、宅配料金が安いからである。宅配大手がシェア拡大のために、一方は裏技・寝技で政界に規制緩和攻撃を仕掛け、一方は役所との全面対決というポピュリズムでもって、消費者の利便性のため凌ぎを削った結果、宅配業界は疲弊してしまい、その制度自体が危うくなっているということだ。

集荷場の夜勤は4割が外国人(大半がベトナム人)だそうだ。横田氏は、この仕事が外国人からもそっぽを向かれるようになったら宅配はどうなってしまうのかとき危惧している。

この本を読んでいて、介護業界が重なって見えてしかたがなかった。
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